佐倉さんは眼を閉じて首を横に振る。


 「ううん、気付いて貰いたかったわけじゃないの、ただ……一目会いたかっただけだから」


 「そっか――何年ぶりかな?」


 「13年だよ……あの桜雨の日から13年。ノンちゃんが私の全てを持って行った日――」


 空から舞う花びらは13年前を彷彿とさせる。


 桜雨の中、微笑み合う僕と佐倉――香。


 幼いながらも僕達は確かに恋をした。