次の日の朝、少し早目に出た僕は桜並木と中程にあるベンチに腰かけて、何処を見るでもなく座っていた。


 「柏木君?」


 僕はその声に頭を50度ほど動かして、声の主に言った。


 「『ノンちゃん』だろ?」


 微塵も驚く様子を見せずに、佐倉さんは笑窪を作る。


 「やっと……気付いてくれたんだね」


 「まさかそんなに美人になってるとは思わなかったしな。言ってくれたらよかったのに」