一瞬、ほんの一瞬だが僕はドキッとした。それは多分、『ときめいた』とか『恋する合図』とは違う、悪戯を見つかった時のようなものだった。


 「今更何言ってんだよ――」


 平静を装って言った言葉だが、多分平静に聞こえなかったと思う。


 「……うん」


 小さく言った茜は哀しそうに見えて、僕は体を折って額に軽くキスをした。


 懺悔をするようにそっと――