仕事で日本各地を飛び回る父親が、久しぶりにまとまった休みが取れた夏休み最後の週だった。

 職人気質で厳しいが真っ直ぐな人間だった父も、少しおっちょこちょいだが優しかった母も、何かにつけてすぐに泣く二つ下の妹も、みんな大好きだった。

 何年振りかの家族旅行。二泊三日で九州に遊びに行った帰り道の事。

 高速道路を走る我が家の車の横を、スポーツカーが追い越して行った。

 その時僕は手にしていた本の一文に感動し、運転席に座る父に声をかけた。


 『見て、父さん』