『一つの可能性……ノンちゃん、前を見て。ノンちゃんは生きてるんだから』


 桜雨の中に香を見たような気がした。


 急いで立ち上がった僕は学校へ向かって走り出す。


 飛び込むようにして入った教室は、ホームルーム前のざわめきに包まれていた。


 息を切らす僕に視線が集中して、教室が静まりかえる。


 僕の隣の席には誰も座っていない。