「望?」


 ゆっくり振り返った僕の目に懐かしい顔が映る。


 宮田先生ではなく茜――


 たった一晩離れていただけなのに、何十年も離れていたような気がする。


 「馬鹿!何してるのよ!」


 雨の中駆け寄ってきた茜を、僕は抱きしめて言った。


 「言ってもいいかな?」


 僕の腕の中で、茜は小さく何度も頷いた。抱きしめた茜の体は暖い。