その日の夜、僕は一睡もする事なく朝を迎えた。


 重い体を引きずるようにして家を出た僕は、毎日欠かす事なく通っていた桜並木を通らなかった。


 朝のホームルームで茜を見た時、いつもより化粧が濃いのが目についた。


 きっとその原因は僕だろう――


 香は何もなかったかのように、いつも通りの笑顔で隣の席に座っている。


 ホームルームが終わり、茜が教室から出て行くと一斉に僕は囲まれた。