「ありがと――これだけで十分だよ……」


 唇が触れ合うか触れ合わないかの瞬間、香の唇から洩れた吐息で僕は目を開いた。


 「これ以上しちゃうと愛されたくなっちゃうから……ずっと側にいたくなっちゃうから――」


 香は僕の胸を押すようにして、腕の中から体を抜く。


 「愛してるよ……香が好きなんだ――ずっと側にだって居る……」


 香は寂しそうにに微笑んで首を横に振って、僕の言葉を否定した。