「桜雨――」


 そう言いながら、僕の前を歩く女の子は振り向いた。

 サッカーコートの倍程も長さがある桜並木。

 今年の桜は遅目の開花で、四月も終わろうかとゆうのに未だその美しい姿を悠然と残していた。

 毎朝の通学路である桜並木を僕はゆっくりと歩いていた。

本当はもう少し近い道があるのだが、去年高校に入学したての時にたまたま見つけたこの桜のアーチに魅せられた僕は、少し遠回りをして登校する。

 通学路から外れているから、普段は僕以外に学生はいない。