真っ暗な何も見えない闇の中で、私は一人宙に浮いていた。そこへ、光が見え始めた。
「光り?」
私はその光の方へと宙を蹴り、歩き始めた。
光のトンネルの中は、目が眩むほど眩い。その光はなぜか、とても冷たかった。
その光りのトンネルを抜けると、そこで見たものは……金色に光る体毛と、赤い瞳、裂けた口に、大きな牙、鋭い角の、大きな化物と、お母さんとお姉ちゃんがいた。
二人は……化物に殺されていた。
その鋭い大きな牙で、姉の腕を引き千切っていた。化物の口に血がいっぱいついて……。
「や、やめて、やめてえぇ――」
「ハッ!」
息を切らせながら、テーブルから体を接がした私は、今のが夢だった事に気づいた。
それから、しばらく息を整え、椅子から身を起こそうとした時だった。
自分の掌に血がついているのに気がついた。ほんの少しだったけど……。
「やだ、何なの?あの夢といい、この血といい!」
そんな時、父が息を切らして帰って来た。そのまま玄関に膝をついている父に声をかける。
「どうしたの、お父さん?」
「母さんと、智子が……」
沈黙が流れる。私は、不安に包まれた気分がした。
その時、お父さんが口を開いた。
「母さんと、智子が……死んだ」
「え……?」
その言葉に戸惑いと、あの夢が交差した。
(息がしづらい……)
私は恐る恐る、確かめるように声を出す。
「ねえ、お父さん」
声がうわずる。
「お母さん達どうして、何で……死んだの?」
その質問に父は、悲しそうに戸惑って答えた。
「母さんと、智子はな……何かの動物に、食い殺されたんだ。父さん、遺体確認で見に行って……圭子は、見ない方が良いな」
悲しそうに、悔しそうにそう言ったお父さんの顔とは裏腹に、私の顔は驚きと、拒絶が交差していた。
(嘘でしょ……ありえない!食い殺されたって……ええ!?何で、だって、それじゃ、まるで……私の夢みたいじゃない!)



