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一人きりになった帰り道、私は燃えるような夕日を見た。
足を止めてポケットに突っ込んだままのハンカチを取り出す。
私の世界の中で、親友である硝子ちゃんと対等になれるのは、硝子ちゃんが痛い顔をしている時だけだった。
至るところに跳ねる私の髪と真っ直ぐさらさらな黒髪のような、私と硝子ちゃんの圧倒的な差。
それを、硝子ちゃんの痛みや辛さでチャラにする。
日に日に弱っていく瞳の光を見つめて、私はいつも心をリセットしていた。
冷たくなりはじめた風がゆるく足の間を通り抜け、近くの街路樹をかさかさと揺さぶる。
私はきっと、燃えるように美しい赤にも、汚いだけのうす茶色にもなれない。
汚くて、だけど曖昧な。
「あお」
硝子ちゃんの声を思い出し、細い声で呟く。
私は、固く固く目を閉じた。
fin
