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「大丈夫、硝子ちゃん?」
三年二組の野村硝子は、日常的に暴力を振るわれている。
きっかけは、ほんの些細なことだった。
好きな人を取ったとか、態度が生意気だとか、確か本当にくだらないものだったはずだ。
そんな風に柄の悪い女子数人のグループに目を付けられた硝子ちゃんは、それでもちっとも動じていなかった。
始めは、殴ったり蹴ったりで痛がっている硝子ちゃんを見て笑っていただけだった。
しかし、だんだんと誰も笑わなくなり、気付けば痛めつけることだけが目的となっていた。
教室内の誰一人として笑顔を見せている人はいないにもかかわらず、暴力だけは今もずるずると残っている。
私が硝子ちゃんに歩み寄るのは、一連のことが終わってから。