「お前、馬鹿じゃねーの。俺達側に来るなんて、狂った?」
あの後に駆け込んだ『Heaven』の店で、ジュリとズッキーに散々不審がられた私。
当たり前だ、デビューをするという彼氏との結婚を蹴ってRe:tireという無名のバンド、しかも悪評が尽きない"ルカ"の味方をしたという話を散々ぶち撒けたのだから。
『あんたなんかよりジュリのほうがいい奴だよ!』
『今のカナタと結婚するくらいならズッキーとする!』
『ソラくんの悪口言わないで!』
路上での私の剣幕を見て唖然としていたカナタは、終いには指輪の入った包みを投げつけて去っていった。
へこんだ白い箱を開いて中身を見ると、シンプルな細い指輪が収められていて、内側には"Haru"と彫られていた。
覗き込んだジュリが悪戯が成功した時の子供のような笑みを浮かべる。
「あーあ、"別の人にあげて"なんて無理じゃん、ソレ」
「…カナタにとって私はどうでもいい女の一人だと思ってた」
「本当に"悪い女"だね、ハル」
カウンターから出て来て話を聞いているズッキーも珍しく悪戯っ子のような幼い笑みを浮かべていて、それに釣られるように私も笑った。
試しに指輪を嵌めてみたら薬指に入らず小指にする羽目になってしまって、ピンキーリングかよ、なんて言ってゲラゲラと笑うジュリの頭を叩く。
「指輪が合わないなんて…ここ何日かヤケ食いしたからだ、きっと」
カナタの女の影に苛々していた私に、ソラくんが食え食えとお菓子を勧めてくるから、余計に、だ。
言われて見ればスカートのウエストもキツくなった気がする。
ええい、と自棄になり、カシスオレンジおかわり!と叫ぶと、ズッキーは、ハルは面白すぎる、と立ち上がってカウンターへカラのグラスを持って消えていった。


