中学、高校と、私は地味で冴えない女の子だった。

スカートの丈は膝下で化粧っ気もなく、ぼさついた黒髪もそのままに登下校を繰り返すような芋々しさ。

友達がいないから、休み時間は古典的なウォークマンを開いては寝たふりをして、机に伏せる毎日。

窓際で華やかに騒ぐ集団の中にいる子達が少しだけ羨ましかった。


「ねー、またタチバナさん寝てるよ」

「誰か話し掛けてあげたほうがいいんじゃないの?」

「でもさーいつも音楽聴いてるし、ひとりが好きなんじゃない?」


放っとこうよ、いつ話し掛けてもあの子無反応だし、とこのクラスで一番可愛いと評判の宮河 櫻(ミヤガワ サクラ)が言った。

大学生の彼氏のねー、知り合いのカフェのオーナーさんがすっごいイケメンでー。

この前原宿に行ったらカットモデルやりませんかーとか言われちゃってー、ウザいんだけどー。

他人が好意的に捉えられない話題を撒いている彼女に、周りの子達も影では散々ついていけないだのムカつくだの言っている癖に、本人の目の前ではイエスマンロボット宛らに肯定ばかり。

嫌悪のボリュームをフルに上げて、窓際の席から空を見ていた。

大人になれば、この狭く四角い世界から抜け出せるものだと展望していた。

でも、過去も未来も然程変わらない。義務的教育に縛られるのも社会的に拘束されるのも、同じ意義を持つ。

そして意図的に張られた運命の糸も、剰り歓迎は出来ない。

出来る事ならばコンプレックスも胸の痞(つか)えも、ハサミで切り落としてしまいたかった。