「いやー、あん時のハルさんのスゲー顔!ムービー撮っときたかった!」


俺、一目で惚れちゃったもん、と何事もないように放つソラくんのバイタリティは、やっぱり若さとしか言いようがない。


ソラくんは、家庭の事情で隣の家の老夫婦──彼の祖父母の家に居候をさせてもらう事になったらしい。

この夏から近くのK高校に転入したのだと聞いた。

踏み込んだ話はしていないし、彼からも話しては来ないから、深い事は知らないのだけれど…表面上はなにもないように振る舞っていても、きっと誰もが様々に抱えている事情がある。

だから、敢えてなにも訊かない。

セミ事件があってから、こうしてソラくんと話す謎の日々。

この子、歳の割に話が上手いから、モンハン発売日だの、ギンタマがどうの、友達のジュンくんが滅茶苦茶モテるだの…自分が興味のない話題でも、つい聞き入ってしまう。


「…楽しそうでいいな。ソラくんモテるでしょ?キミ、面白いし」

「えー、結構ね!でも俺はハルさんに一途だから!」


顔も可愛いし面白いし、進学校であるK高校に通うぐらいだからきっと頭もいいのだろう。

…でも、この子の唯一の残念さは、私が好きだとか恥ずかしげもなく連呼してくるところだ。

ハルさん愛してる!と、真剣なんだかふざけてるんだか…否、本当に真面目な顔で言ってくるから、困る。

彼氏がいるからごめんね、と言っても、俺の好きな人なんだから他に男がいて当たり前!と言い放つソラくん。

…正直悪い気がしないなんて、私も悪い女かな。

だって仔犬みたいで、可愛いんだもん。