「おう」


「春ちゃん、遅かったね?」



私を出迎えたのは、2人の先輩。



「どうした、遅かったな」

こちらに顔を向けた先輩の、色素の薄い茶色の髪の毛が揺れる。


「先生に雑用頼まれちゃって…」


私がそう答えると、目の前の先輩は呆れ顔でため息をついた。



伊沢 紅葉(いざわ くれは)先輩。

整った容姿に加えてクールな性格が特徴の、美術部の部長。


「…お前、先週遅れた時もそう言ってなかったか?」


「…だって、断れないんですもん」


「あーあ、本当に春ちゃんはお人好しだね?」


不意に声が聞こえて振り向くと、もう1人の先輩が机に座ってこちらを見ていた。