何だか非常階段のような感じだった。 鉄の階段らしくヒールで歩く度にカンカンと音を鳴らす。 「―――あ」 「お。愛莉紗か。部屋に行くのか?」 「うん」 荷物を運んでくれたのか、お父さんが階段から下りてきた。そして上りの私と鉢合わせ。 何だか気まずい。母親はそこまでだけど父親とは『引っ越す』って聞いたときに会っただけ。 それまでは私が家に帰らなかったため、何ヵ月間も顔を合わせることがなかった。