“向こう”にいた頃には考えられない程に長閑。


爆音・人混み・雑音・廃棄塵で溢れる“向こう”は、活気付きながらも、汚れた土地に長閑な場所なんて皆無だった。


少女はコバルトブルーに輝く海に爪先を少しだけ――――‥


『ぽちゃん』


脚を浸した。


此所が幾らか暑いと言ってもまだ季節は桜餅色の桜が彩る春。海水が少しだけ、脚をひんやりと冷やしていく。



「くぅ〜、冷たい!」



冷たいと言いながらも興奮気味に海の塩水をバシャッバシャッと波立たせる。


金髪の少女は始めて見る幻想的なコバルトブルーの海に、興奮を隠せなかった。