私が黙っていると、彼が呟くような声で私に問いかける。 「瀬野さんってさ、好きな人とか……いる?」 雨の音で打ち消されてしまいそうなくらい小さな声だったから、内容を理解するのに時間がかかった。 「え…」 別に、種梨くんと恋バナするつもりはなかったけど。 どうしてそんなこと…… 「…いないよ」 あの男の子のことを、好きな人にカウントしていいかわからなかった。 いるって答えたほうが、話の話題が広がったのかな。