ハッと気づいた時にはすでに遅し。


目の前のお兄ちゃんは今まで見たこともないような形相で顔を引きつらせている。


今更自分の言葉にひどく後悔する。


でも、我慢出来なかったんだ……。


こんなに優しくしてくれた慧くんをバカにされた気がして……。


「……お前、自分が何をしているかわかってんのか?」


お兄ちゃんはあたしの肩をグッと掴む。


わかってる…わかってるんだよ……!!



痛いほどわかってるから、こんなにも辛くて、どうしていいか自分でもわからないんだよっ…。


あたしが俯くと、お兄ちゃんはグッと肩を掴む手に力を入れて引き寄せた。


「……帰るぞ」


え……?


待って、帰るってどこに…?


ヴァンパイア界に戻ったら、もう二度と人間界に戻れなくなるんでしょ?


「……嫌だっ」


「ミリアッ!!」


「嫌だ、帰りたくない!!」


あたしは必死に抵抗した。


慧くんと離れ離れになるなんて、もう慧くんに会えなくなるなんて……。


「ふざけるな!!」


抵抗するあたしに、お兄ちゃんの聞いたこともないような低い怒鳴り声が響く。


その声にあたしが怯んだ瞬間、ものすごい力で腕を引かれる。


あぁ、もうダメだ…。



あたしが諦めた瞬間---。