怖かった。


人間に依存し、ヴァンパイアとしての自分を見失っておきてを破ったヴァンパイア。


そして運命の血を吸うことができなければ、命を保てなくなる。


その姿がどれだけ愚かで見苦しく、恐ろしいものか、今日見たあのヴァンパイアで目の当たりにした。


あのギラギラと異様なまで光った赤い瞳と恐ろしい表情が、脳裏に焼き付いて離れない。


もし、あたしがこのまま彼を選び、おきてを破ったのならば……。


異界からは見放され、運命の血を吸うことができなければ、


あのヴァンパイアのように最後を迎えなければならないのだ……。


そう考えるとヒヤッと背筋を何かが走り、恐怖に身体が支配される。


もう長くない。


確実にこの彼との幸せの終わりが近づいている。


第一、あたしは彼のそばにいるべきものじゃない。


彼のためにも…自分のためにも……もうこの生活に終止符を打たなければ……。


そう思うとぎゅっと胸が締め付けられた。


慧くん…ごめんね、本当にごめん……。


こんなあたしに、あんなに優しくしてくれたのに……。


あたしは心の中で何度も何度も彼に謝った。