恋したvampire


――――――――――――――

―――――――



帰り道。


月明かりが眩しい暗い夜道を彼と2人、手を繋いで歩く。


あたしにとって暗闇は恐怖ではない、むしろ心地いい。


でもその心地良さは、彼が隣にいることで何倍もより感じられる。


しかしある路地裏に差し掛かると、妙な気配を感じゾクッと背筋に何かを感じた。


見てはいけない。


頭ではわかっているのに、身体が言うことを聞かない。


あたしはそっと路地裏に視線を向けた。


「…ッ……‼︎」


するとそこには赤く瞳を光らせ、牙を剥き出しにしたヴァンパイアの姿。


あたしは一目見た瞬間、それがおきてを破り、狂ってしまったヴァンパイアだと悟った。


きっと運命の血が吸えぬまま彷徨い続けているのだろう。


ギラギラと異常に光った瞳とその形相から、明らかに正常ではないことが見て取れる。


そのヴァンパイアがあたしを見つけ、大きく口を開き近づいてきた瞬間、あたしの体は硬直した。