恋したvampire

「お腹すいたでしょ?」


彼は一旦あたしを下ろすと、リビングへ入りあたしのコートを取ってきてくれた。


「まだ外は肌寒いからね」


そんな彼の小さな彼の優しさにも心が温まる。


「行こっか?」


「うんっ」


あたしは彼について、彼と出会ったあの日以来の外の世界へと踏み出した。


「ミリア、寒くない?」


「大丈夫だよ」


昼はすっかり暖かい春だけど、夜はまだ時折冷たい風が吹いている。


久しぶりに外に出たからまだ外の空気になれなくて……。


緊張の色を隠せないあたしを、彼はよく気にかけてくれる。


「ほら」


「えっ…?」


「手、貸して?」


ずっと俯いているあたしに、彼はそっと手を差し出した。


「うんっ」


あたしはニコッと笑ってその手をとって歩き出す。


その手の温度ですら安心する。


周りにいる人間の視線や、人間界独特の匂いは少し不快だったけど、彼と一緒なら全然気にならなかった。