恋したvampire

でも…彼と出掛けるのに未練がない訳ではない。


少し楽しそうだな、なんて思ってみたり。


「……わかった」


あたしは迷いながらも彼の誘いにのることにした。


「でも…夜がいいな」


さすがにあの日差しを浴びる勇気はないから彼にお願いする。


「わかった。じゃあ明日の夜な。決まり」


すると彼は嫌な顔ひとつせずに聞き入れてくれ、楽しそうに微笑んだ。


そしてあたしの耳元で囁くんだ。


「なんて、ただ自分がミリアと出掛けたかっただけなんだけどね」


いきなりそんなことを言うものだから、またあたしの顔は赤く染まり、心臓が跳ね上がる。


あたしはいつも彼に振り回させる。


でも、そんな彼とお出掛けか……。


不安はあるけど楽しみにしている自分がいる。


もしあの人に見られたとしても、何とか誤魔化せばいい。


もう少しだけ…もう少しだけ彼と過ごしたいの……。


しかし、そんなあたしの考えは甘かった。


外には現実を突きつけられるものがそこら中に転がっている。


しかも、あの人があたしのことを目を光らせて監視していたなんて、思ってもみなかった……。