恋したvampire

「大丈夫だよ、慧くん」


なるべく、平然を装いながら……。


「そう? 少し顔色悪いけど……」


「ソ、ソファで少し寝てたの…! 急に起きたから、ちょっと……」


誤魔化せたかな……?


ドクンドクンと不快に脈打つ心臓のせいで、頭も上手く働かない。


「……そっか。ミリア、低血圧だから朝も弱いしね」


あたしが言うと、彼は納得したように言い、優しく笑う。


「無理しなくていいからね」


そう言ってポンッとあたしの頭を撫で、リビングに入る彼。


彼が去った後も、動機が収まらない。


あたしは深く深呼吸をする。


「……ハア…」


辛かった……。


今までまともに十字架を目にしたことがなかったから……。


収まりつつある心臓の反面、本当に吸血鬼って十字架が怖いんだなって、冷静に考えている自分がいる。


でも、何より辛いのは……。


「慧くん……」


彼と自分との身体の違い……。


彼はネックレスをしていても平気なの。


それに比べてあたしは……。