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彼がピアノを弾いてくれた日から、あたしたち2人の距離はどんどん縮まっていった。


彼が大学に行っている間、あたしは家事をしたりして彼の帰りを待つ。


そして彼が家にいる時は、2人でのんびり過ごす。


別に付き合っているわけじゃないけど、何だか恋人みたいな生活。


「ふふ、変なの」


不思議な関係に生活。


それなのに何だか幸せで安心する、心地良い時間。


買い物は彼が頼んだものを全て買ってきてくれるし、特に不自由することなく、人間界の暮らしにも慣れてきた。


まあ、まだ眩しいあの朝の光には慣れることはできないけどっ。


思えば本当に不思議な生活だった。


だって、あたしは彼のことを何も知らない。


彼の大学での姿や、どうしてこんなあたしを受け入れてくれたのか……。


だって彼だってあたしのことを何も知らないはずだから。


そんな何も知らない相手と一緒に住み、惹かれ始めているあたし。


彼も相当な変わり者だと思うけど、あたしも彼に負けないくらい変わり者だと思う。