恋したvampire

「……慧くんすごい‼︎」


曲が終わると感動が身体を支配して、思わず彼の腕を両手でギュッと掴む。


そんな瞳を輝かせるあたしを見て、彼は嬉しそうに微笑んだ。


「ありがと。そんなに喜んでもらえるとは……俺も嬉しいよ」


相当上手いんだろうとは予想していたけれど、こんなに感動するとは思わなかった。


「ねぇ慧くん、この曲、何て言う曲?」


あたしが首を傾げると、今度は彼は困ったように笑う。


「曲名?……そうだなぁ、今パッと浮かんでたメロディーを弾いただけだからなぁ……」


「へっ…?」


彼の言葉に、思わず耳を疑うあたし。


今の…楽譜も何もないってこと?


ただ頭に浮かんだメロディーを、一瞬でこんなにも美しい旋律で奏でられるなんて……。


あたしは彼の才能が只者ではないことを悟った。


「でもミリアがこれだけ喜んでくれたんだから、せっかくだしつけようか」


彼はニッコリと微笑むと、またあたしの耳元で囁いた。