「ねぇ、ミリア」


「ひゃっ⁉︎」


胸の高鳴りを抑えようと、また手元に視線を移した瞬間、フワリと彼が後ろから抱きついてくる。


耳元に彼の吐息を感じる距離。


たとえ相手が誰であろうとも、ドキドキしないはずがない。


「ふふふ、可愛い」


「ふぇ…⁉︎」


顔を真っ赤にして照れるあたしに、彼が優しく微笑む。


今…可愛いって言った……?


ますます自分の顔が熱くなっていくのがわかる。


「ありがとね?」


そんなあたしに、追い打ちをかけるように囁く彼。


言い終わると、彼はあたしの頭をポンポンと撫でてソファへ戻って行った。


どうして……。


こんなに胸が高鳴るのだろう……。


どうして彼は、こんなにもあたしの心の中を乱れさせるのだろう……。


出会って間もないのに、どんどんあたしの中で彼という存在は膨らんでゆく。


ジッとソファに戻る彼の姿を見つめながら、あたしはどこかで認め、覚悟を決めた。


あたしは今、タブーを侵し始めている。


そして…この不思議な人間からあたしは逃げることが出来ないだろうと……。