朝ごはんを作っている間も、背中に感じる彼の視線を妙に意識してしまう。


こんなに居心地の悪い世界なのに、何故かこのままここにいれたら…なんていう感情が芽生え始めていた。


ダメだってわかってるのに……。


なぜかこの気持ちを止めたくないって、心のどこかで思ってる……。


やっぱりあたし…――。


「……え? 慧くん⁉︎」


そんなことを考えていると、何やら後ろで出かける支度をし始める彼の気配を感じた。


「ん? どうした?」


そんな本人は悪びれる様子もなく、キョトンとこちらを見ている。


「まさか…大学、行くの?」


「うん」


もちろん、とでも言いたそうな顔。


「ダメだよ‼︎ 昨日まであんなに熱あったのに!」


「もう大丈夫だって……」


「ダメ‼︎」


あたしが目尻を吊り上げると、彼はフウとため息をついて、渋々鞄を下ろす。


「……わかったよ」


呆れたようにハハッと笑う彼は、何故か少し嬉しそうで……。


そんな表情にすら、ドキッと胸が高鳴った。