でないとあたしはきっと、過ちを犯してしまうだろう。


彼とこれ以上いたら、あたしはきっと彼に惹かれていく。


そうなる前に姿を消そう…。


そう思い、満月を見上げると、ガチャンと玄関の扉が開く音がした。


いよいよだ…。


これで…あたしは一人前のヴァンパイアとして認められる…。


あたしはゴクリと息をのみ、運命の人間を出迎えに玄関へ向かった。


「お帰り、慧くん」


「ただいま…」


玄関に行くと、俯いた彼は低く呟いた。


そんな彼に、あたしは首を傾げる。


普段はもっと優雅で優しいのに、今日の彼はどことなく暗い。