家事が一通り終わると、ふとテーブルに飾ってあるバラの花束が目に留まった。


あたしはそれに、無表情で近づく。


そして、美しく咲いている真っ白なバラの花を、一本抜き取った。


するとたちまち真っ白なバラは萎れ、茶色く枯れてしまう。


…そう、あたしは人間ではない。


ヴァンパイアなのだ。


彼に近づいたのは、あくまで運命の血を吸うため。


ましてや人間と恋に堕ちるなんて、おきて破りの行為だ。


あたしは枯れたバラの花びらを握り締めた。


今夜にでも血を吸ってしまおう。


そうでなければ、あたしは………。