「口に合うかわからないけど…」


あたしが言うと、彼はポツリと呟いた。


「まともな食事なんて久しぶり…」


胸の前で手を合わせ、食べ始める彼。


確かに冷蔵庫の中には、まともな食材が入っていなかった。


「有り合わせで悪いけど…」


「十分うまいよ。ごめんね、食材なかったでしょ?」


「まあね…。今度は買ってきてね?」


でないと、明日は何も作れそうにない。


あたしが言うと、彼はクスッと笑った。


「俺、何買えばいいかわかんない」


「何で?」


「今まで、普通の生活なんてしたことないし」