「首尾はどうだ。うまくやれそうか?」


怒涛の勢いで鳴り響く心臓に手を当てていれば、その勢いとは正反対の穏やかな声で常葉が訊いてくる。


「まったくもって無理だよ、そもそもの商品がまずいんだもん」

「ならばそれをどうにかしたらいいということだ」

「簡単に言うな。それができればおじさんだってわざわざ神頼みなんてしないって。常葉、今回はやっぱりわたしには荷が重すぎる。さすがにこれはどうしようもないよ」


だけど常葉は両手で耳をパタパタして「あああああ聞こえないいいい」と子どもみたいことをするのだ。こんのやろう!


「くそ、全部食べきりさえしなければ常葉にも食わせてやったのに!」

「ははは、またの機会を待つとしよう」

「ねえ常葉、今回は何か七つ道具くれないの? ほら、振りかけたらどんなものでもおいしくなるかつお節とか」

「そんなものあるわけないだろう。お前、俺を未来から来たろぼっとだとでも思っているのか。俺はただの美形の神だぞ」

「神様だから言ってんじゃん……。ねえ、なんかないの?」

「無いものは無い。では頑張れ千世。俺は良い結果しか聞かんぞ」

「あ、おい待て!」


と言ったところで自分勝手な神様が聞くはずもなく、常葉は現れたときと同じく突然にスッと消えてしまった。

ため息が出る。下手すると涙まで出そうだ。でも泣くと余計にむなしいから絶対に泣かない。


「ああ、どうしたものやら」


頑張れと言われたって何をしたらいいかさっぱりわからないよ。そもそもわたしにできることがあるなんてとてもじゃないけど思えない。

とりあえず、今日は一旦すべてを忘れて家に帰ろう。そうしよう。


と、心を無にして歩いていた帰り道、「あら」と声がして振り向いた。