この学校は3流ではあるけど、一応進学校と謳っている。

だからほとんどの生徒は大学へと進み、それ以外の進路に進む人なんてクラスにひとりふたりいるかいないか。


「でもよかったよ。先生も応援してくれるってさ。たぶん、あたしが大学受けたとしてもロクなとこいけないからだよね。あたし成績悪くてよかったあ」


そう言って笑う紗弥は本当に安心したような顔。

呆れてわたしもちょっと笑っちゃったけど、たぶん、そんなにうまくは笑えなかった。


「あ、あたしもう部活いかなくちゃ。千世はそのまま帰る感じ?」

「うん。三波屋寄って、おやつ買って帰る」

「いつものパターンだね。じゃあ、気をつけてね」

「紗弥も、部活がんばって」

「がんばるような活動でもないけどね」


また明日、と。

カバンを持ち、手を振って教室を出ていく紗弥を見送った。


わたしは、立ったまま、机の上でプリントを伸ばし、しわだらけのそれに適当に知っている大学の名前を書いて、一番上に、自分の名前を書いた。

カバンに筆箱を入れてからプリントを畳む。畳んだ中身は、もう見ないようにした。


帰る前にもう一度空を見上げた。灰色の空。薄いような分厚いような雲が、うねうねとその場に漂っている。


「あんた、まるで、わたしみたい」


誰にでもなくつぶやいた。

空は変わらず曇ったままで、どんよりそこに、たたずんでいた。