「だめだ。この願いは千世が叶えるのだ」

「はあ? だから無理って言ってるじゃん。頑固だなあ」

「頑固なのはお前のほうだ。決して無理ではない。千世にできることだ。お前が無理だと決めつけているだけだろう」


一番高く上がったところで、常葉がブランコから飛んだ。

ふわっと、羽が生えているみたいに体を浮かせて、柔らかく、ゆっくりと地面へ足を着ける。


「俺は社で待っている。いい結果を期待している」

「ちょっと、待ってよ!」

「だから社で待っていると言っているだろう」

「そういう意味の待ってよじゃない! わたし、どうしたらいいのかわかんないんだってば」


慌てて声を上げると、わたしの方を向いた常葉が、ふうと小さく息を吐く。


「仕方がない。根性なしのお前に、優しい俺が神の七つ道具のひとつを授けてやろう」


そして袖の中から「じゃーん」と何かを取り出し、それをわたしに投げて寄越した。

咄嗟に掴んだ手の中のもの。それは小さな透明の袋だ。

その中には、無数の、干からびた小魚が入っていた。


「おーい! ただのニボシじゃん! 何が神の七つ道具だ!」

「失敬な。それには俺のまじないがかけてある。良いことあるぞ」

「はあ!? 良いことって何?」

「では、俺は社へ戻る。せいぜい頑張れ」

「ちょっ……! 待てこら!」


手を伸ばしても遅かった。麗しき神様は、笑顔で手を振るとスウッとその場から消えてしまった。

わたしは、ニボシを片手に握り、誰もいなくなったそこをむなしく睨み続けるだけ。