糖度∞%の愛【改訂版】


この男が新入社員として入ってきたころから、教育係をしていた私は、コイツがいかに有能で仕事が出来るのかを知っている。そして、子犬とはとても言えない周到さと、頭の回転の良さで、今まで数ある案件を見事にこなしてしまっているのだ。

大学時代に、この会社でバイトでもしていたんじゃないかと疑いたくなるほど、仕事が出来た。

教育係と言えば聞こえがいいけど、実際は教えたことなんて数えるほどしかない。

それに、私が教育係に指名されたとき、散々周囲の女性社員や、毒舌な親友の真帆から、“羨ましい”だの“役得だの”と言われるほど、注目されていた。

それほどまでに、この五月女 彼方(さおとめ かなた)はルックスも抜群だった。
加えてその長身と有能さだ、さらに女性社員を虜にしたのは言うまでもないだろう。

そんな五月女には、今まで浮いた話が不思議とひとつもなかった。

一緒に働いてきた3年、そんなそぶりもなかっただけに、この告白には驚きだ。
しかも、お決まりのセリフとちょっと違ったのが、“付き合って”の前に“結婚を前提に”がついたことだろうか。
確かに私は今年28で、同級生にはすでに結婚して子供がいる人もいる。
結婚を考えなくもない年だと思うけれど、五月女は確か、まだ25だったはずだ。男がその年齢で、結婚を考えて男女交際を始める、なんて聞いたことがない。
その年齢で結婚を考えるなんてまだ早いんじゃないのかと、いらない老婆心が湧いてしまう。
それくらいには、五月女のことを日ごろから気にかけていた。