「……同じ手口しか使えないのか」


思わず呆れて、そんなセリフが口をついて出た。
あれから数日たっても、同じことは繰り返されている。今日も帰り支度をしようと、ロッカーを開けてみれば、またメモ用紙がこれでもかというほど、びっちりと貼り付けられていた。ご丁寧に一枚一枚テープで張ってあるのだ。

ポストイットを使わないでテープを使う手間をかけるなら、テープの端を折って、剥がし易くしておいてくれる手間をかけてほしい。そうすればこっちは簡単にはがせるのに。何枚もテープを剥がすこっちの身にもなれ。
いや、こうやってイライラさせるために、剥がしにくくしてるんだろうけど。
内心文句を言いながらも、テープの角をカリカリと爪でひっかけて剥がしにかかる。

綺麗に撮れるものもあれば、斜めに切れて、また角をカリカリしながら剥がさなきゃいけないのもある。

別に、こんな幼稚染みた嫌がらせ、なんてことはないんだけれど。

それでも、やっぱり他の女から見ても彼方はいいオトコなんだ。そんな男が私の彼氏なんだ。そうやって鼻高々になる私は、結構彼方に愛されてる自信がついてきたのかもしれない。
こんなことされても、一癖も二癖もある私が彼方の彼女でもいいと思えているのは、やっぱり食堂の一件があったからだ。
それがなかったら、今こうやって呑気に、一枚一枚剥がしてなんていられなかっただろう。


「うーん、書いてある内容も大して変わらないな。 もっとバリエーション豊かな発想はないのかなぁ」


私だったら、絶対に足がつきそうな手書きにはしないし。もっとこう、精神的なダメージを与えるような言葉を考えるけど。
剥がし終えたメモに、一枚一枚目を通して感想を一人ごちる。