糖度∞%の愛【改訂版】



「一年半くらい前に藤城さんから沙織さんの病名を聞いて、その日から色々調べました」


五月女の独白に、口を挿むことはしなかった。けれど、そんなに前から知っていたということには驚いた。知っていたのに、コイツの態度は一度も変わったところがなかったから。


「一生インスリン注射をしなくちゃいけないこと。ポンプにしたとしても三日に一回は針を変えなくちゃいけないし、その場合は機会をずっとつけてなくちゃいけないこと」


コイツ、口先だけじゃない。本当に色々調べてる。
次々と並べられる病気の知識は、間違ってない。


「でも、炭水化物量に合ったインスリン量を打てば、好きなものを食べられるってことも。沙織さんがすきなお酒も好きなだけ飲めるってことも。低血糖になっても糖分を口にすれば、早いうちなら症状が改善されることも、ちゃんと勉強しました」


ごくり、と自分の喉がなる。

――……どうしよう。

今の今まで、コイツのことを恋愛対象として考えたことなんてなかった。なのに、こんなにも私を理解しようと努力して、その上で告白してくるコイツの想いに、すでに鼓動が速くなっている。