「いつもメシの前に席を立ちますよね」
「……」
「具合悪そうなときは、決まって甘いものを口に入れてる」
「……」
「それが一年続けば、不思議に思います」
「でもそれだけで“ソレ”を知ることは不可能だわ」
「……そこは、すいません。藤城(ふじしろ)さんに聞きました」
そこで初めて真帆の名前が出てきて、内心舌打ちした。
口が堅い真帆が、うっかり口を滑らせたとは考えられない。つまり意図的に、コイツに話したってことだ。
その理由も検討がつかないし、離したことを私に伝えなかったこともすごくむかつく。
でもそこで真帆に対して、苛立ちを募らせていても話が進まない。一つ溜息をついて、気持ちを落ち着かせる。
とりあえず、今は目の前のコイツをどうするか、だ。伏せていた顔を上げて、「……で?」と続きを促す。
「だから、沙織さんのことが好きなんです。 結婚を前提に付き合ってください」
「……Ⅰ型糖尿病が、どういう病気か知ってるの?」
さっきと一字一句変わらない告白を繰り返した五月女をじっと見つめる。敢えて“Ⅰ型糖尿病”という偏見を与える言葉を使ったのは、試そうとしたわけじゃない。ただ純粋にコイツの思いのたけを知りたかったからだ。


