徒花のリーベスリート

 別れの言葉はお互いにない。
 それもいつもの事だ。
 どうせまた一刻もしない内に再会するのだから必要ないと言えばないのだけれど。








「……………き、よ」








 小さな小さな声で、去り往く彼の背に囁く。
 口にした私自身でさえ聞き取れないほどの声。
 案の定、彼は振り向かないまま退室していった。
 気付いて欲しい、聴いて欲しいと思って呟いたわけではないのだから当然だ。

 けれど、それでも、胸に溢れてくる気持ちを止められない。


「…………………………………すき」


 もう一言だけ呟きを零して。
 私もゆっくりと立ち上がった。




 想いは、ここに捨てていこう。

 いままでありがとう。

 そしてさようなら。

 どうか、幸せに。





 涙は、出なかった。










 ...Fin...