なのに、私の中の何かが消極的な心を圧する。
逃げるな。
何かがNOと言わせない。
……私じゃなくてもいい。モデルは務まる。
だから、私はあなたのモデルになれない。
答えは用意したのに、
言いたくて、言いたくない。
渦巻く矛盾に、頭を抱えたくなる。
「……なんで私なの」
やっと出た言葉は、それだった。
こぼれた呟きだったけど、小田桐君は弾かれたように頭を立てて、その体を回す。
きゅるる、と椅子が鳴く。
「それは____……、」
ふわりと遊んだ茶色の毛先に、目が覗いて私を捕らえた。
「どーしても、知りたい?」
振り向いた彼の表情は、先程の間に何があったのか、
自信に満ちたような、猟師のような。
胸がざわりとする、強気な笑みを浮かべて。
「……全部聞いてから、決めるから」
私にとっても、重大なこと。
そして初めて見た表情に、何故だか少し緊張している。
「じゃあ……」
何かを狙うような目つきで、私を手招きする。
もとからそんなに距離はなかったけど、体を前のめりに寄せると、
瞬きする間に耳元にくすぐったい感触があった。
小田桐の髪、だ。
真横に小田桐君の頭が迫っている。
ていうか、近い!
驚きで反射的に身を引こうとすると、肩を捕まれて制される。
「ちょ、!?」
「俺はどうしても琳ちゃんがいいんだ」
秘密の話をするように、掠れた低い声が鼓膜をくすぐる。
間近で空気が震えるのを、初めて感じる。
女の子とはまるで違う、男の人の声。
「琳ちゃんが好きだから」
囁かれ、頭がフリーズして、言葉だけがリターンを繰り返して意識を支配する。
しばらく固まって、気がついた時にはもう、大きな身体は離されていた。



