「仁科琳って、まだ子供だったけど、結構有名だったよな。年のわりに大人っぽくて、GIRLSの専属モデル以外にもイメージガールとか、CMとかやってたり。オレの周りにもファン多かったんだよ」
2年前、突然引退したティーンモデル、仁科琳の良さを語り出され、私は少し気恥ずかしくなってくる。
「そうなの」
「うんうん。そん中でも絶対オレがいちばん好きだったけど。あ、ドラマとかもちょっと出てたりしてたっけな。演技はいただけなかったけどー」
「うるさい」
あ。しまった。
しかし小田桐君はちらりと視線を寄越しただけで大して気に留める様子もない。
「ガチガチで可愛かったけどね」
「……なんで、そんなに好きなの?」
聞く声が縮こまった。
「目」
ざっくりした答え。
きっぱりした声音。
「あの目が、いいんだよね。自信に満ちてて、挑発的で。でも満足してなかった。もっと上にいきたい、負けたくないって思ってるのが、目を合わせたらわかった」
え?
会ったこと、あったっけ?
「?……目、か」
かつてアピールポイントとして強調されつた私の両目は、今は前髪に覆われている。
カップに残る冷めてしまったミルクティーをすべて喉に流すと、
くすっと、頭上で笑う気配がした。
「さ、行こっか。美味しかった?」
小田桐君との会話って、どこか腑に落ちないな。
小田桐君が立ち上がって椅子を引く。
見ると、彼が頼んだ軽食の皿はすでに下げられている。
……私が飲みおわるのを、待っていてくれたらしい。
ちびちび飲んだの、悪かったかな。
「……うん。今度はどこ行くの?」
「アトリエだな。いいとこだよ」
再び手を繋がれて歩き出す。



