律儀に礼してウチを出た小田桐君を、訝しげな視線で射す。
「琳ちゃん、顔こわい」
面白げに突かれた額に手を当てて、尚睨む。
寝起きは機嫌が悪いのだ。
「何でウチ分かったの」
「何でってー。一緒に帰ったとき、家まで送ってったじゃない」
だろ?とでも言いたげな顔をされる。別にストーカーだとか言いたいわけじゃないんだけど。
コホン、咳払いをひとつして。
「それで?どこ行くの」
仲間、てことはデザイン部の人たちと会うんだろうか。
「そーだな。どこにしよっかな」
「……は?」
「まぁ昨日はあんま時間もなかったし?ふたりでゆっくり話をと思いまして」
からりと笑う小田桐君の茶色い髪を引っ張ってやる。
「いって、ちょ、琳ちゃん痛い!」
ほぼ条件反射だ。
「時間くれるって言ったじゃん!私の睡眠時間かえせー!」
休日の住宅街に私の荒いだ怒声が響く。
「そーだけど、落ち着かなくて!」
彼が羽織っているシャツの袖も思い切り引っ張る。
わーやめろ、とか
いてててて、とか
小学生のときに聞いたような何処か楽しげな抵抗を聞いていると、なんだか頬が火照ってきた。
小田桐君を可愛いと思ったのもあるし、
こんなに大声を出すのもかなり久しぶり。
普段使わないエネルギー消費すると、変に疲れる。
「ねぇ、なんで私、怒ってるのかな」
いつもの私なら、こんなことで怒らないし、手も出ない。
ましてや、小田桐君と言葉を交わすようになったのは僅か数日前。
今までにないくらいの早さで、私が小田桐君に気を許してきているのは、行動からして歴然だ。
「琳ちゃんが寝太郎だからじゃない?」
また腕を引っ張る。
なんでだろ。
なんでなのかな。
何故かこの人に近づいてみたいと思うし、全てを受け入れてくれそうな雰囲気を醸し出してる気がしてしまうし、
前から私のことを知ってたかのような親しげな態度だし。
「あ、琳ちゃん、琳ちゃん。思いついた」
彼の腕を引いていた手を捕られる。
そしてそのまま歩き出す。
「今日のデートコース」
目を見開いて間抜け面した私の顔を愉快そうに覗きこんで、小田桐君は手を握り直した。



