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中1の頃だった。
「琳ーっ!見たよ、これ!マジすごいよー!」
新学期を迎えた教室で、友達が雑誌片手に駆け寄ってくる。
それは、ティーン向けのファッション誌<GIRLS>。
中高生の女の子たちに圧倒的人気を誇る雑誌だ。
その表紙を柔かな笑顔で飾る専属モデル、仁科琳(ニシナ リン)、13歳。
まぎれもなく私、美間田琳であった。
仁科という苗字は、結婚前の母方のもので、密かに気に入っていたので芸名に使わせてもらっている。
「えへへ、ありがと」
少しはにかんで、友人に笑みを返す。
「あ、それ私も見た!」
「すごいよねー、あのGIRLSの表紙だよ?しかもソロ」
「昨日テレビ見たら、CMにも出てるじゃん」
「マジうらやましー!どーやったらそんな可愛くなれんの?」
輪ができていく。
広がっていく。
私はその中心で、少し誇らしげに笑っている。
もちろん、なにもせずに手に入れたわけではない。モデルとしての人気、仕事の実績は、地道な努力と、周りに決して負けない向上心を持ち続けることで勝ち取ったものなのだ。
周りがそれを理解しているのかは定かではなかったけど、それでもいいと思っていた。
普通そんなの理解しようとか思わないし、褒められたり、羨ましがられるのは純粋にうれしかった。
私はみんなに認められているんだって思うことができた。
それだけで十分だったから。
モデルとしての仕事を始めて2年、中学に入っても周囲は色めきたっていた。
でも思春期を迎え、自分と他人とを絶えず比べるようになった女の子たちは、次第に私を見る目を変えていった。
___なんかムカつく。
___調子乗りすぎじゃない?
___私あんなんがモデル?って思うもん。
___そうそう。言うほど可愛くないでしょ、絶対。
___てか、むしろブス!
___だよねー、ウケるー!
_____きゃはははは!
あはははは。
ははは。
「……聞こえてるって」
傷ついた。
笑いながら傷ついた。
気づけばひとり。浮いた存在。
そのうち、いじめにも発展する。
それでも仕事に打ち込んでいた私だったけど。
なんか、がんばればがんばるほど、ダメになってっちゃったのよね。
あの頃の私は、多分精神的に限界だったんだと思う。
学校では何されても、身体に傷がつかないように気を張って。上位をキープしていた成績も落ちていく。
仕事では、だんだん集中力が落ちてきて怒られる。
あげく、表情を作れなくなって撮影中に泣き出してしまう始末。
それではモデルなんて務まらない。
あー、ナサケナイ。



