「ん〜…」



上手く決まらなくて、つい洗面所の鏡の前で唸り声をあげる。



三崎 小夏(みさき こなつ)16歳。



あたしは今、ヘアアイロンで伸ばした前髪を綺麗にハサミで切り揃えている。



ハサミを持つ右手に神経を集中させて、ゆっくりとハサミを閉じる。



その瞬間…



「ちょっと小夏!いつまで前髪揃えてんの!?真琴くん待ってるよ!?」



お母さんの大声により、前髪を少し切り過ぎてしまった。



「ちょっとお母さん!いきなり声出すから前髪切りすぎちゃったじゃんか!!」



ハサミを開閉させてお母さんに怒鳴る。



朝のあたしは機嫌が悪い。



さらに前髪を切り過ぎたことにより、機嫌の悪さのボルテージが上がった。