誰かが先輩の名前を呼んで、先輩が顔を右に向けた。


その誰かを見つけた瞬間、先輩は笑顔になった。


先輩は立ち上がり、女の人が先輩の元へ駆け寄った。


人目もはばからず、2人は抱き合い、キスをした。

 
数日前のカフェテリアの会話が頭の中で響く。


信号が青になったのに私はそこを動けずにいた。

 

キレイな人だった。


友達の言うように歳は先輩よりも年上に見えた。


小柄で華奢で、女性らしいけど可愛すぎない服装からは大人の魅力が漂っていた。

 
友達が噂するように不倫なのかな?ここからじゃ、指輪まで確認出来ない。


2人は体を抱き寄せあったまま、話をしている。


先輩の柔らかい表情を見れば、彼が彼女に恋してるのは明らかだった。


私は2人に近寄ることもその場を離れることも出来ずに、立ち尽くしていた。

 
幸せそうな2人から目が離せない。


ずきんと胸の奥が痛んだ。




その時だった。