少し嫌味っぽく答えると、先輩は口をすぼめた。

 
「じゃあ、いいや。ちよこのやつ貰うから」

 
先輩はすきあり!と私の手から缶を奪い取ってカフェオレを飲み干した。


「うん、いいチョイスだね。甘くない」

 
空になった缶を私に渡すとそう感想を述べた。

 
「間違って砂糖の入ってないカフェオレ買っちゃったんです」

 
缶を受け取り、そう答えるものの、私は嘘を吐いていた。


甘いものが嫌いな先輩のために私は無糖のカフェオレを選んだのだ。


もしかしたら今日は先輩が来るかもと少しの祈りを込めて。




猫先輩はとっても気まぐれな人だった。


学校にも来たり来なかったり、授業にも出たり出なかったり、秘密基地にも来たり来なかったり、明日は秘密基地に来るって言っても来なかったり、口約束をしても、その約束を平気で破る。


その気まぐれさは本当に猫みたいだった。


先輩と秘密基地を共有して半年が経つけれど、私は先輩のケータイの番号すら知らない。


それどころか先輩がケータイを持っているのかも怪しい。


そんな不思議な人なのに・・・


何で自分がこんなに彼に惹かれているのか解らない。


解らないけれど、私は猫先輩のことがすごく好きだった。