センチメンタル*宅配便



私たちの家が建ち並ぶ住宅地の通りをまっすぐ進んだ先が、高台への坂道をなっていて、私もシバケンもその高台にある幼稚園に通っていた。


少子化と経営不振を理由にその幼稚園は数年前に閉園した。


建物が取り壊された後は、更地になっていた。

 
「そう、幼稚園の跡地が今は草原みたいになってるの。そこでダンボールの中に捨てられてたんですって。かなり弱ってて、一時は生死の境を彷徨ったのよ。カウルは兼に救われたようなものね」

 
おばさんは私の隣に腰を下ろすと、私の腕の中いるカウルと優しく撫でた。


その眼差しがシバケンを見ているように思えた。


おばさんもカウルとシバケンが少し似ていると思っているのかもしれなかった。

 
「やっぱりこの子、柴犬なのかなぁ」

 
ぴんと立った三角の両耳や、くるんとした尾っぽ。


まん丸の黒い目に短くて毛並みのいい茶色い毛。


あだ名がシバケンだけに、柴犬を拾って来たのかな。

 
「雑種だと思うけど、柴犬の血が入っているかもしれないわね」とおばさんは言う。

 
「カウルってかわいい名前だね」


「兼が付けたの。何かのドラマを見てて、響きが気に入ったんですって。意味は解らないけどね」

 
シバケンらしいなぁと懐かしく思う。


カウルを撫でながら、おばさんと話をしていたら、だいぶ日が暮れていたのに気付いた。