センチメンタル*宅配便



「顔がキレイなままだったのが、唯一の救いだわ」

 
そう言って、シバケンのお母さんは私の肩に顔を埋めて泣いた。


私は優しくおばさんを宥めると、シバケンの遺体が置かれている和室に足を踏み入れた。


6畳程の部屋にシバケンは横たわっていた。


布団が敷かれ、顔の辺りには白い布がかかっている。

 
頭上の畳の上にはお線香が立って、独特の香りが部屋中に漂っていた。

 
顔にかかった布を取り、シバケンと対峙した。


私のよく知るシバケンがそこにいた。


まるで静かに眠っているようだった。


顔は青白く、血の気がない。


頬に触れてみると、蝋人形のように固かった。


横たわった身体の下にいくつものドライアイスが敷かれ、シバケンの肌はひんやりと冷たかった。

 
完全なる静がそこに存在していた。


いつも笑顔で友達に囲まれて、活発でやんちゃで、元気に動き回るシバケンを見ることはもうできないんだ。

 
頭の中で理解しているつもりでも、シバケンがいない実感がまるで湧かなかった。


「嘘だよ!」そう言って、舌を出しながら、起き上がって、びっくりした顔を私を見て笑うかもしれない。


けれど、いつまで立ってもシバケンは目を覚まさなかった。