シバケンが亡くなった?嘘でしょ?私は呆然としたまま、携帯を握りしめ、膝から床に崩れ落ちた。


 

幼馴染みの柴田兼、通称シバケンとは20年来の親友だった。


家が隣同士で両親が仲が良く、お互い同い年で1人っ子だったせいもあって、兄弟のように育った。


物心がついた時からシバケンは私の隣にいた。


だから、これかもずっと隣にいて歳を取っていくものだと思っていたのに・・・

 
お母さんの話だと、シバケンは仕事の外回り中に、自動車の前に飛び出してしまった子供を助けようとして、自分が身代わりになってしまったらしい。


全身を強く打って、運搬先の病院に着く頃には息を引き取っていたのだという。

 
「誰かの身代わりになって、自分が死んじゃうなんて、優しい兼ちゃんらしいわ」

 
お母さんは泣きながら少し笑った。


せめてもの救いはシバケンの助けた子供が無傷だったことだ。


シバケンを思い出す時はいつも笑った顔が思い浮かんだ。


柴田兼だから略してシバケンという安易なあだ名は、黒目がちで童顔の彼をそのまま表わしていて、愛嬌が良く、いつもみんなの中心いるシバケンはどことなく犬のようだった。

 
「千秋の誕生日を盛大に祝ってやるよ。ものスゴイサプライズを考えてるからさ。まぁ、楽しみにしててよ」


そう得意気に話してたのは数日前の事だった。